 小児皮膚疾患
                小児皮膚疾患
            
            
お子さんの肌はとてもデリケートです。皮膚トラブルが起こりやすい上に、かゆみを我慢できず掻きむしってしまい、病気を悪化させることがよくあります。お子さんの皮膚の病気は、ひどくなる前に対応することが大切です。また、お子さんの皮膚は軟膏の塗り方や保湿剤の使い方等日常的なスキンケアも大切です。
小児の主な皮膚疾患
乳児湿疹
乳児湿疹は、主に生後数週間から数ヶ月の乳児に見られる湿疹の総称です。
大抵の場合は自然に改善しますので、適切なスキンケアが大切です。乳児湿疹の原因は、状態や月齢によって様々です。
- 新生児ざそう、いわゆる新生児ニキビと言われる赤いポツポツ
- 頭皮や眉毛付近に黄白色のかさぶたが広がる脂漏性湿疹
- 皮膚の乾燥により、外部の刺激に敏感になって表れる乳児湿疹
- あせも
新生児ざそうと脂漏性湿疹は、お母さんからもらった女性ホルモンの影響で皮脂の分泌が多いために余分な皮脂が毛穴に詰まってしまい、炎症を起こしている状態です。
脂漏性湿疹のケア方法としては、1日1回、入浴する30分ほど前にワセリンやベビーオイルを塗り、患部をやわらかくしてから、よく泡立てた石鹸でしっかり洗ってあげると少しずつ改善します。
また、赤ちゃんのお肌は乾燥しやすく、乾燥により皮膚バリア機能が低下すると洗浄剤のすすぎ残しや、汗、汚れの付着などが刺激となって炎症を起こします。まずはよく泡立てた石鹸で、汚れをしっかり洗い流してあげてください。そして、お風呂からあがったらすみやかに保湿して乾燥を防いであげてください。
おむつ皮膚炎(おむつかぶれ)
おむつかぶれは、おむつがあたっている部分に生じる皮膚の炎症です。赤ちゃんの皮膚は薄く、バリア機能が未熟でデリケートなため、おしっこやうんちによる刺激やムレ、長時間おむつが湿っている状態や擦れが続くと、皮膚炎を引き起こしてしまいます。また、ムレによって赤ちゃんの肌のバリア機能が低下し、カビ(特にカンジダ菌)の繁殖を促進してしまうこともあります。
こまめにおむつを交換し、肌を清潔に保つことが大切で、おむつの種類を変えるとよくなることもあります。よくならないときは、ワセリンや亜鉛華軟膏、ステロイド軟膏などの塗り薬、カンジダ皮膚炎が疑われる場合は抗真菌剤の塗り薬を処方することもあります。
とびひ(伝染性膿痂疹)
とびひは、皮膚に細菌が感染することで起こる皮膚の病気です。湿疹や虫刺されなどを掻きむしった部位に細菌が感染し、そこから“飛び火”するかのように周辺や離れた部位に症状が広がります。とびひの原因菌となるのは主に、黄色ブドウ球菌や溶血性レンサ球菌という健康な人の皮膚や鼻の中、のどなどによくいる常在菌と呼ばれる菌です。皮膚にできた小さなキズから入り込んだとき、とびひを起こす原因となります。
患部の清潔を保つことが大切で、なかなかよくならないときは、抗菌薬の内服や塗り薬、かゆみが強いときは、抗ヒスタミン薬を処方します。
みずいぼ
みずいぼは、伝染性軟属腫ウイルスというウイルスの感染によって、皮膚や粘膜にできる小さなイボの一種です。皮膚が薄くてバリア機能の未熟な乳幼児は、まだ免疫もないため感染しやすいです。みずいぼは、掻いてつぶれたり、掻かなくてもある程度の寿命で自然に脱落して、それがまた他の皮膚にくっついてその場所に感染し、次々と広がってしまうことが多いです。健康なお子さんでは、6か月~3年で自然治癒するとされていますが、個人差が大きいです。
皮膚科ではピンセット摘除や液体窒素療法、外用薬など様々な方法で治療されますが、最近は、みずいぼに対して銀イオンを配合したクリームを販売されているクリニックもあります(当院では販売しておりません)。今後、皮膚に塗ることでみずいぼのウイルスに反応して、水疱(水ぶくれ)をつくって排出する塗り薬の販売が予定されています(保険適応あり)。
蕁麻疹(じんましん)
蕁麻疹は、突然、皮膚にボコボコとした隆起(膨疹)と赤み(紅斑)が出現し、かゆみを伴うことが多いです。
アレルギーが原因の蕁麻疹は思っているよりも少なく、多くの場合「特発性蕁麻疹」といって、目立った原因がなく、カゼをひいていたり、体調が悪い時、睡眠不足の時やストレスが多い時などは出現しやすいです。また、お風呂上りなど、温まった時に出現しやすいのも特徴です。数十分~数時間で症状が自然に収まることが多いのですが、蕁麻疹だけでなく、唇やまぶたが腫れたり、喉がかゆい、声がかすれている、腹痛や吐き気、嘔吐などの消化器症状がある、呼吸がゼーゼー、ヒューヒュー言っていて息苦しそうにしている場合はアナフィラキシーショックの危険があるため早急に受診をお勧めします。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹が、慢性的に良くなったり悪くなったりを繰り返す病気です。皮膚のバリア機能が低下し、外からのアレルゲンなどの刺激が入りやすくなっているため、これらが免疫細胞と結びつき、炎症を引き起こします。
治療の基本はスキンケアで、皮膚の清潔を保ち、しっかり保湿を行います。
その上で外用ステロイド薬を基本とした塗り薬で皮膚の炎症を抑えていきます。
治療を開始すると見た目はきれいになりますが、目にみえない皮膚の部分にも炎症は続いています。すぐに抗炎症治療をやめずに、徐々にお薬を減らしていくことで、炎症を抑えた状態を維持し、見えない部分の炎症もよくしていきます。炎症を抑える塗り薬は、外用ステロイド薬だけでなく、タクロリムス軟膏やデルゴシチニブ軟膏、ジファミラスト軟膏があり、これらを組み合わせることで、薬の副作用をさけながら、お肌のよい状態を維持できるようにしていきます。
ニキビ(尋常性ざ瘡)
ニキビは、皮脂などが毛穴に溜まり、面皰(めんぽう)という状態になることから始まります。そして詰まった毛穴の中で細菌が炎症を起こしニキビとなります。思春期に多く、成長期のホルモンバランスの急激な変化が原因で発症します。ニキビを放置してしまうとニキビ痕や色素沈着となってしまいますので、毛穴のつまりの治療を続けて、新しいニキビができるのを抑えることが大切です。
脇汗
脇に汗をかくことは自然なことですが、汗の量が多くて日常生活に支障が出ている場合は「原発性腋窩(えきか)多汗症」という病気の可能性があります。思春期に気になり始める方が多く、15~19歳の約7.9%が多汗症である可能性があります。今は体への負担が少なく、低年齢から使える塗り薬が保険適応で発売されています。
手汗
日常生活をする上で、さまざまな困りごとをもたらすほど手のひらから汗が出る症状を「手掌多汗症」といいます。手のひらの皮膚から吸収されて、皮膚の下にある交感神経から出される発汗を促す物質(アセチルコリン)をブロックすることで過剰な発汗を抑える塗り薬が保険適応で発売されています。
